1995.4:作業療法士国家資格取得
経験年数25年
7年間リハビリテーションセンター勤務
以降 介護保険系サービスに従事

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痛みの種類③ :その他の要因によって起こる痛み

痛みについて

「侵害受容性疼痛」と「神経障害性疼痛」に当てはまらない痛みは「心因性疼痛」などと言われてきましたが、医療が発展するにつれ様々な要因がわかってきました。

その他の痛みの原因

脳卒中後疼痛

脳の「視床」部分などの血管障害によっておこります。

視床痛、視床上痛、ワーレンベルグ 症候群の総称。主な症状はしびれや灼熱痛から痛覚過敏まで、個人差が大きいです。知覚神経の過度な興奮、または、脳や脊髄などの中枢神経での興奮性経路や抑制性経路に対する障害が考えられます。発症機序の解明が不十分で、有効な治療方法も確立されていません。

参考:「脳卒中後疼痛に対する治療戦略の現状とモデル動物確立の必要性」原田 慎一ら

痛みに対する神経系の変化

痛みに対する神経系の感受性が高くなることがあります。痛みの信号を検出し、送り、受け取っている神経線維と神経細胞が繰り返し刺激されます。刺激が繰り返されると、神経繊維と神経細胞の構造が変わったり、これらの活動性が高まったりすることがあります。その結果、通常なら痛くないはずの刺激でも痛みが生じたり、痛みの刺激がより強く感じられたりします。(この作用を感作と呼びます。末梢神経付近で起こる「末梢感作」と脊髄で起こる「中枢性感作」があります)

また、痛みを抑制する作用がうまく働かないなどの原因も考えられます。

末梢性の感作とは?

①侵害受容器が活性化発火の閾値が低下

②末梢神経の損傷で神経や神経節にナトリウムチャネルが異常に増加、異常な活動電位が発生する異所性発火を生じる

③末梢神経の損傷でαアドレナリン受容体が異常に増加して、そこに交感神経が伸びだし、交感神経からのノルアドレナリンの放出でαアドレナリン受容体の活性化により異常な活動電位が発生する

つまり侵害受容器が活性化し興奮閾値が低下し発火しやすくなる、発火のポイントが増える

中枢性の感作とは?

①侵害刺激が低頻度で連続的に加わると痛覚ニューロンが刺激以上に発火するようになり、 ついには刺激がなくなっても発火が続くようになってしまう

②高頻度で連続的な刺激が加わると、ニューロン間のシナプスの伝達効率が長期的に増強する現象の長期増強(LTP)が生じる

③シナプスでの痛みを伝えるイオンチャネルが活性化して、グルタミン酸やサブスタンスPといった神経伝達物質の増加

④障害神経から放出される神経栄養因子が神経の異常な発芽を促し、本来痛みの神経と接続しない感覚に痛み情報がつたえられてしまう神経線維の可塑的な変化が生じる

⑤神経周囲に存在するグリア細胞の活性化によって神経の興奮性が増強される。

つまり、いったん末梢性感作が形成されると、脊髄内の受容体が活性化し、脊髄神経が通常より強く興奮する。

脱抑制とは?

内因性の下行性抑制系(脳から脊髄へ神経伝達物質のノルアドレナリンとセロトニンが放出され痛覚情報の伝達を抑制する)の機能低下や、末梢神経障害による抑制性介在ニューロンの消失によって抑制系が機能低下(脱抑制)することも痛みを増幅する原因となる。

複合性局所疼痛症候群

(2.の症状の他に自律神経系の症状なども加わります)

この症候群は、けがをした後に起こるのが典型的です。神経組織の損傷後や軟部組織や骨損傷後に、説明がつかないほど不釣り合いな痛み(焼け付くような痛みなど)が、長期間持続します。また痛み以外に「発汗異常」「むくみ」「皮膚温の異常」のいずれかが認められるものと定義されています。その他の症状として運動機能の変化(筋力低下ジストニア)萎縮性の変化(皮膚または骨萎縮脱毛関節拘縮)などみられます

治療法としては薬剤投与理学療法、認知行動療法、神経ブロックなどがあります。ペインクリニックなど痛みを扱う専門医の受診が勧められています。

慢性化した筋肉疲労

「姿勢のかたより(傾き)」などによって筋肉が慢性的に収縮し、血管が圧迫され血流が悪くなります。酸素不足から発痛物質が発生して痛みを感じます。また、血管が圧迫されて神経への血流も悪くなり、痛みやしびれがでてきます。

心因性疼痛

交感神経が興奮すると血管を圧迫し、血流が悪くなります。その後は4.と同じです。

TVで他の人の痛そうな場面を見ても自分まで痛くなってしまう、言い争いになったり、嫌なことを言われたりすると急に痛みが強まることってありますよね。

仮病ではなく、交感神経が興奮して瞬時に、本当に痛くなるんです。