学生の時、授業では必要最低限の知識を学ぶ場です。作業療法士の養成校に入ったときは、一般人であり、全くの素人です。そこから3~4年かけて医療人としての知識(医学の基礎)、作業療法とは何か、作業療法士に 必要な知識を習得します。
実習では、「How to 作業療法」を体験する場です。必要な知識を習得できているか、やる気があるのか、この2点は見られます。知識しかないのだから、実際にできないのは当然です。知識として習ったことを実際に体験する場です。こんな風にやるんだ、こんな風に考えるんだと言うことがわかれば実習は成功と言えるのではないでしょうか。
<OT実習に必要な知識>
- 筋肉、神経など解剖学の基礎知識
- 各疾患の主な症状(脳卒中片麻痺、脊髄損傷、神経難病、整形外科疾患)
- 高次脳機能障害の理解(失語、失行、失認、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、行動と情緒の障害)
- それらを評価するための評価方法、検査方法
精神科、小児を除き、どんな検査方法があるのか、載せてみます。
評価方法
<意識レベル>
★JCS(Japan Coma scale):3-3-9度方式とも呼ばれる。呼びかけや痛みなどの、刺激に対する覚醒の程度によって評価する。短時間で簡便に行え、緊急時に適しています。
★GCS(Glasgow Coma Scale):開眼(E)4段階、言語(V)5段階、運動(M)6段階で評価する。
亜急性~慢性期の意識障害患者の身体残存機能や、予後の評価に有用です。
<知的機能>
★HDSーR(長谷川式簡易知能評価スケール):
認知症のスクリーニング。9項目の質問で30点満点で20点以下は認知症と判定。
MMSE(Mini Mental State Examination):
認知機能のスクリーニング。見当識、記銘、計算、再生、言語、構成について18項目の質問をして回答を得る。30点満点で23点以下で認知障害が疑われる
★コース立方体組み合わせテスト:一般的知能を評価。4~16の積み木を使って17の図版を再生する。素点から精神年齢を換算しIQで表記する。
レーヴン色彩マトリックス検査:
言語障害や運動障害のある人の知的機能をスクリーニング。図版の欠損部分に適合する模様を6種の図版から選択する。1セット12問で3セットあり、36点満点中24点以下も知的機能低下と判定する。
<半側空間無視>
★線分二等分
★線分抹消
★文字抹消
★模写(ダブルデイジー、立方体など)
★描画(時計、人物など)
<注意力>
★仮名ひろいテスト:無意味な仮名の連続と物語の2種類テスト用紙を使う。「あ・い・う・え・お」に印をつけさせ2分間の正解数、作業数を数える。
★アメフリ抹消検査:ランダムに並んだカタカナの文字列から「ア・メ・フ・リ」に印をつける。
Stroop Test:注意に関連する遂行機能障害を評価。赤・青・緑・黄に塗られたドットを並べたた図版の色名を呼称させる。次に色とは別の色名が書いてある図版を見せ、塗られた色名の本を呼称させる。所要時間、誤反応数を記録する。
TMT(Trail Making Test):視覚的探索課題によって注意障害の評価する。◯で囲まれた数字1~25がランダムに並んでいる図を示し、順に線でつなぐよう指示する(part A)。part Bでは数字と仮名が混在している。所要時間及びAとBの差で評価する。
<記銘力>
三宅式聴覚記銘力検査:記憶力、特に新たな学習能力を評価する。10組の対語を検査者が言い、記憶させてから、対語の一方を言い、もう一方を答えてもらう。
ベントン視覚記銘テスト(BVRT:Benton Visual Retention Test):10種の図版に4種類の施行(10秒提示即時再生、5秒提示即時再生、模写、10秒提示15秒後再生)を行う。正確さと誤謬の数により得点化する。
Reyの複雑図形テスト(Rey’s Complex Figure Test):視覚記銘力、視覚構成能力を評価する。1枚の複雑な図形を模写させる。この模写と3分後に再び思い出して描いた図について、18の部分が描かれているか0~2点で評定する。36点満点となる。
<失行>
SPTA(Standard Performance Test for Apraxia):標準高次動作性検査:失行性の動作障害を評価。顔面動作等13項目について、口頭命令や模倣による動作を行わせる。反応の正誤と分類(錯反応等)を記録する
<身体機能>
★筋緊張
★ROM(Range of Motion)関節可動域測定法:関節の可動範囲を測定する
★腱反射
★病的反射
★感覚(表在覚・深部覚・複合感覚)
★握力、ピンチ力
★MMT(Manual Muscle testing)徒手筋力検査法:筋出力の程度を0~5の6段階で評価する。
<上肢や手指の機能評価>
★STEF(Simple Test for Evaluating Hand Function):上肢の動作速度を評価する。10種類の対象物を検査台上で、つまみ、移動し、離すときに要する時間を測定し10段階で評定する得点が高いほど機能が高いことを示す。
FQ(手指機能指数)テスト:手の機能を総合的に、詳細に検査する。①動作的機能、②補助手機能、③調節的機能の観点から10のサブテストにより構成されている。
<片麻痺>
★Brunnstrom stage:片麻痺のある人を対象に、上肢・手指・下肢それぞれについて、運動麻痺の回復レベルを6段階に分類する。
片麻痺機能評価表(12段階グレード法):片麻痺の回復状態を詳細かつ定量的に把握する。Brunnstrom stageの回復過程に基づく。
MFT(Manual Function Test)脳卒中上肢機能検査:①上肢の運動、②把握、③手指操作の観点から32のサブテストにより構成されている。上肢挙上、リーチ、つまみ、運び等8項目について4~6段階で左右に分けて評価する。
SIAS:Stroke Impairment Assessment Set(脳卒中機能障害評価法):「麻痺側運動機能、筋緊張、感覚機能、関節可動域、疼痛、体幹機能、視空間認知、言語機能、非麻痺側機能」の9種の機能障害に分類される22項目からなり、各項目とも3あるいは5点満点で評価される。多岐にわたり総合的に評価します。
<協調性>
協調性検査:上肢の協調性評価。円の中心に点を打つ、縦線の切れ目をぬって線を引く、線状にランダムに並ぶ小円に印をつけるという3課題について時間と正確性を記録する。
巧緻動作
母子対立位
側腹つまみ(lateral pinch)
指腹つまみ(pulp pinch)
指尖つまみ(tip pinch)
三指つまみ
など
パーキンソン病
Yahr分類(Hoehn-Yahr重症度分類):パーキンソン病の重症度と生活障害度を評価する
振戦
固縮
無動・寡動
姿勢反射障害
仮面様顔貌
書字障害
自律神経機能(嚥下障害、発汗障害、膀胱障害、便秘、起立性低血圧)
精神機能
<ADL評価>
★FIM(Functional Independence Measure) 機能的自立度評価法:
しているADLにおける介護量の程度を評価。食事等の運動ADL13項目とコミュニケーションと、認知ADL5項目について、7段階で評価。
★BI(Barthel Index):入院や療養生活に必要な活動における自立度。食事、整容等のセルフケア項目と排泄コントロールの10項目について、自立度を3段階で評価。100点満点。
<高齢者向け評価>
障害老人の日常生活自立度判定基準:介護保険適応の可否を判断するために自立度を評価。障害を有するが生活が自立している(ランクJ)、屋内生活自立(ランクA)、ベッド上生活が主体(ランクB)、全介助を要する(ランクC)の4段階で該当段階を決める
PGS(Paracheck Geriatric Rating Scale)パラチェック老人行動評定尺度:施設に入所している高齢者の状態を鑑別する。身体機能、身辺処理技能、社会交流技能の3領域、10項目について評定する。
N式老年用精神状態尺度:認知症の程度を評価。5項目(開示、関心、会話、記銘、見当識)について7段階で評定。50点満点で43~47点が境界。
興味チェックリスト:高齢者用日本版は29項目。自己記入や面接で80種の活動について興味の程度を回答。